知床観光船の遭難事故で、現場近く、北海道斜里町の小型観光船は捜索活動へ協力するため、4月29日からの大型連休中の運休を決めています。そのなか、知床半島の反対側、羅臼町で4月29日から観光船の営業を始める会社があります。
どのようにして安全を確保しているか、八木キャスターが取材しました。
八木 隆太郎 キャスター:「29日から夏の営業を開始する知床の羅臼のクルーズ船です。観光船の最終点検を行わうために、今、海上保安庁の職員が来ました。安全点検を行います」
4月28日、海上保安庁などによる最終点検を受けたのは、羅臼町の「知床ネイチャークルーズ」です。
八木 隆太郎 キャスター:「船内にはライフジャケットが大量に並んでいます。海保の職員が書類を広げながら細かいチェックをしています」
「KAZU 1(カズワン)」の事故を受けて、設備の状況や運航に関する書類などが確認されました。
羅臼町での最終点検は5つの観光船の運航会社が対象です。
(乗客が船内からシャチを見て喜ぶ様子)
根室海峡を舞台に17年前からツアーを行っている知床ネイチャークルーズは、船から野生動物の生き生きとした姿を見られると人気で、これからの時期はシャチやミンククジラを間近で観察することができます。
知床ネイチャークルーズ 長谷川 正人さん:「きちんとした冷静な判断があれば起こらなかった事故かと思う」
しかし、営業開始を前に「KAZU 1」の遭難事故は思わぬ影響を与えていました。
知床ネイチャークルーズ 長谷川 喜勇さん:「事故を受けて不安な人も増えまして、キャンセルとか運航に関する問い合わせ、”安全面どうなんだ”という声を聞いた。もともと入っていた予約から2割ほど減った」
これまでは、この時期に見られる動物などツアーに関しての問い合わせがほとんどでしたが、船の安全を心配する声が急増したといいます。
このため会社のホームページに船の安全設備や傷の有無、船員の経験年数などを初めて記載しました。
知床ネイチャークルーズ 長谷川 正人さん:「GPSプロッターで自分の船の位置や、地形的なものを把握している。私たちはAIS(船舶自動識別装置)を搭載していて、自衛隊の掃海艇が、レーダーではなく電波で読み込むという、ハイスペックなレーダーを搭載している」
船の位置や状態を自動で知らせる「AIS」と呼ばれるシステムやGPSプロッター、それに魚群探知機など必要な設備投資をしているといいます。
知床ネイチャークルーズ 長谷川 正人さん:「どれだけ気をつけてもヒューマンエラーはつきまとう。今回もそうだけれども、どれだけいいものをつけても同じ。今まで以上に徹底してやっていかなければいけない」
遭難事故があった観光船の運航会社、知床遊覧船の桂田社長は、4月27日の会見で「波の高さが1メートル以上になりそうなときに帰ってくる”条件付きの運航”を認めた」と説明し、会社の「安全管理規程に風の強さや波の高さなどの数値は書いていない」としました。
知床ネイチャークルーズ 長谷川 正人さん:「(数値が)ないことはない。数値がなければ許認可が下りない。安全管理規程をきちんと提出しなければいけない」
大自然を相手にその魅力を伝える知床の観光船。4月29日から始まる観光ツアーを前に徹底した安全管理の点検が続いています。
※「知床ネイチャークルーズ」を含む羅臼町側の観光船5社は、29日午前9時から知床観光船遭難の捜索に加わることになり、29日からの夏の営業は延期するとみられています。
(KAZU 1のワンは正式にはローマ数字)
コメント