並べられた4枚のキャッシュカード。
カードの右側をよく見てみると
2センチ程度の切り込みが入っているのが分かります。
実はこれらのカードは、詐欺に悪用されたものだというのです。
その驚くべき手口を徹底解説します。
はさみでカードを切る「切り込みを入れたからこのカードは使えなくなりましたよ」こう言ってキャッシュカードをだまし取る手口が急増していて、今年に入ってから都内では総額4億円もの被害が出ています。
警視庁によりますと、今年6月、東京・目黒区の70代女性Aさんの自宅に警察官を名乗る男から「大阪や札幌のコンビニで(あなたの口座から)12万円が引き出されている」とウソの電話がありました。
Aさんは男に聞かれるがまま、暗証番号や所有しているカードの枚数を教えてしまったといいます。
しばらくすると、同じく警察官を名乗る女が家を訪ねてきて「あなたのカードが詐欺に使われたので証拠として裁判所に持って行く。
不正利用できないようにカードにハサミで切り込みを入れる」などと言って、実際に目の前でカードに切り込みを入れました。
“これでカードは使えなくなった”と思ったAさんは警察官を名乗る女にキャッシュカード8枚とクレジットカード1枚を渡してしまったのです。
その後、Aさんの口座からは1,600万円ほどの現金が引き出されてしまいました。
全国銀行協会によりますと、「ICチップと磁器の両方が破壊されなければATMで使用することが出来る」ということで、カードの一部に切り込みを入れたくらいではまだ使えるので、見ず知らずの人に渡してはいけません。
カードに切り込みを入れてだまし取る手口は去年まで1年に数件しか確認されていませんでしたが、今年は8月末までに、都内で少なくとも185件確認されていて、被害総額は4億円に上るということです。
警視庁の幹部は、「詐欺の発覚を遅らせるための新しい手口が出てきた。
警察や銀行の職員がカードを受け取りに行くことは絶対にないので渡さないで欲しい」と注意を呼び掛けています。
こうしたカードを狙った詐欺の手口は、他にも次々と生み出されています。
続いて紹介するのはクレジットカードを狙った新しい手口です。
警視庁は8月、不正に入手したクレジットカードで買い物をした大学院生の中国人男女2人を詐欺の疑いで逮捕しました。
この2人は中国人詐欺グループのメンバーで、中国にいるとみられる別の男から指示を受け、ノートパソコンや加熱式タバコのカートリッジなどおよそ470万円分を不正に購入したとみられます。
このグループはいったいどのようにして他人のクレジットカードを入手していたのでしょうか。
まず初めに、クレジットカードの会員向けWEBサイトに不正アクセスし、他人のカードにひもづいている名前や住所などの個人情報を偽の情報に変更します。
すると名前などが変更されたカードが新しく登録した偽の住所に送られてくるので、そのカードを使用し、家電量販店やコンビニで買い物を繰り返していたとみられています。
クレジットカードの不正利用は他にも様々な手口がありますが、この手口の場合、被害に気づきにくいあるカラクリがあるといいます。
実は、住所が勝手に変更され、他人に新しいカードが送られても、カード番号などは変わらないため、被害者の手元に残っているクレジットカードもこれまで通りに使えるのです。
そのためクレジットカード会社が不正アクセスに気づくまで、詐欺被害に気づかないケースもあるといいます。
不正アクセスの被害を受けたあるクレジットカード会社によりますと、去年9月~今年2月までの間におよそ80人分の会員情報が不正に変更され、被害総額は1,780万円に上るといいます。
また、クレジットカードの不正利用は、これまでカード番号を使ってネット通販で買い物をするというのが主流でしたが、このようにカードを再発行する新たな手口について、警視庁幹部は「加熱式タバコのカートリッジなど大手のネット通販で買えない商品も手元にカードがあれば店頭で購入できるからではないか」と話していました。
クレジットカードの不正利用を防ぐためにできることを日本(にほん)クレジット協会に聞きました。
まずカードの利用明細をよく確認して、覚えのない履歴があればすぐにカード会社に相談すること。
またカード会社によってはカードが利用されるたびにパソコンのメールや携帯のアプリなどに通知が届くサービスを導入しているところもあるので、是非利用してほしい。
ということです。
詐欺の手口は日々変化しています。
少しでも怪しいと感じたら、警察や国民生活センターに相談するようにしましょう。
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